**ゴーストの破片: ラスト・ワード3 [#o73591af]

7つ目の月の4番目の夜。

朝と夜が9回訪れた。

道は冷たくなかったが、ほんのり暖かいというまでもなかった。

ジャレンに従って渓谷を進んだ。

崖の端沿いにある重たい木に風が当たって寒さが遮られ、水の流れが会話の声を聞こえにくくしていた。

2機のスキフが低空飛行で谷を横切るのを見た。

ここはフォールンの領域として知られてはいなかったが、危険な土地であることに変わりなかった。

あの当時、私達は6人で行動していた。

2つ前の月までは3人。パラモンの灰に背を向けて旅立ってから1人が仲間に加わった。

夜間の見張りは交代で行った。

動きは最小限にし、コミュニケーションも手を使い、簡単な手振りで済ませることもあった。

戦いが勃発しても引けを取ることはなかったが、戦いを望むのは死に行く者だ。私達が町や安全から身を遠ざける理由とは正反対の厳しい現実だ。

スキフを見てクレスラーとナダが怯んだ。実を言うと、私もだ。だが今振り返ると、皆ただ引き返す理由を見つけたかっただけだ。

だからと言って引き返すわけではない。前に進むしかないと、誰もが分かっていた。

前進あるのみ。どこに前進するのか?誰も知らない未知の場所。足跡を辿って進んだ。しばらく進んだ後、ここは永遠に辿り着けない行き止まりではないかと思えてきた。

ジャレンが不安がることはなかった。ただの1度も。

少なくとも、不安がっている様子には気づいたことがなかった。

こんな状況でも私達が前進できたのは、ジャレンの決意と信念があったからだ。

考えるのは辛いが、正直言うとジャレンの死によって、私自身の中にあった炎が再び熱く燃え上がったと思う。あの寒い夜に消えてしまった炎が。

ジャレンはもうすぐだと自信を持っていた。

いや、自信などではない。もうすぐそこだと分かっていたようだった。

他の誰も、自信など感じてはいなかった。どんなに熱意を感じてもすぐに消えてしまう。ブレビン、トレン、メルが戦いで死んでから。

ジャレンのゴーストは、ジャレン以外に声をかけることはなかった。私達とは、ただ一緒に行動しているだけだった。常に周りを警戒し、常に査定していた。私達ではなく、一瞬一瞬を。

このゴーストからは特に見下されていると感じることはなかった。ただ用心深くて慎重だと思った。

このゴーストがしゃべれるのは皆知っていた。言葉少なだが、ジャレンと話しているのが数回聞こえてきたことがある。誰もこのことを話題に出そうとはしなかった。

時折、ゴーストにじっと見られることがある。ジャレンと私との間に生まれた絆のためだろう。ジャレンは私にとって父のような存在だった。あの当時、私は何故ジャレンが私だけを世話してくれるのか、守ってくれるのか分からなかった。多くを失った私はジャレンの差し伸べた手を受け入れたが、今考えると、他の者を自分に近づけようとしないジャレンを受け入れるということは、ただ新しい親ができるということではない。それに気づかないにしても、少なくとも何かを察知しているべきだったと思う。

あの夜、皆いつもより早く目覚めた。

銃弾が木を引き裂き、さらに銃弾が聞こえた。

銃声は離れていたが、心臓がバクバクした。

聞き覚えのある音がした。「ラスト・ワード」。ジャレンのピストル。ジャレンの親友。
もう1発撃ち出された。この1発が夜空の叫びをこだまさせ、静かに切り裂いていた。

1発。暗く、非情な音が静寂に沈んだ。

地面にかがんで静かに待った。耳を澄ませて、希望を抱いて。

ジャレンが消えた。たった1人で行ってしまった。

もしかすると、思ったよりも近づいてしまったのかもしれない。

近づき過ぎてしまったのかも。

ジャレンは1人で死に直面した。

あの時の私には分からなかったが、ジャレンは私達を...
守ってくれた。

これだけ長い道を進み、何年も何年も靴が磨り減るまで進み... 苦しみと炎が散りばめられた道を進み... ついにジャレンは仲間が死ぬのを見るに絶えないと思ったのかもしれない。

こだまが鳴りやみ、私達は皆その場にじっと留まった。どの方向に行ったのか、見当もつかない。闇雲に追いかけるのは賢明ではない。

過ぎ去ったことを変えることはできない。

発砲された弾からいろいろ分かることはあるだろうが、誰もそれを知ろうとはしなかった。

「ラスト・ワード」ではなかった。そして、この世界のどこかで、銃声が聞こえる範囲でありながらも夢とも思えるほど遠い場所で、ジャレン・ウォードが息絶えたか死にかけている。それでも、私達にできることはなかった。

何時間も経過した。永遠のように長い時間。

私達は相変わらずその場にじっとしていたが、日が昇るにつれ、他の者が動き始めた。ジャレン亡き今、一緒に旅をする理由がない。引っ張ってくれる者がいない。復讐の念さえ弱まり、前に進み続けるだけの気力が生まれなかった。恐れと日の出を見続けたいという思いが義務感と切望を真っ二つにしていた。

昼頃には、私は1人ぼっちになっていた。ここから離れることはできない。離れない。

ジャレンを見つけて安心させてやるか、私も見つかってそれなりの幕を閉じる。

死が広がる。

その時、何かが動いた。素早い。緊張の糸が張り詰め、銃にさっと手を伸ばした。

そして、既に現実と受け入れてはいたが、実際に目にすることで大きなショックに襲われた。ジャレンのゴーストが現れ、私から数歩離れた場所で止まった。

私は息を吐き、うなだれた。まだ立ってはいたが、もぬけの殻になった。
この小さき光が、首をかしげるように体を傾けながら私を見て、私の体に光を浴びせた。初めて会ったあの時のように、私をスキャンしている。

私はゴーストの方を、あの1点に光る目を見つめた。

そして、ゴーストが私に話しかけた...  &br;

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